入れ歯とは

入れ歯とは、失った歯を補うために作られた取り外し可能な人工の歯のことです。部分的に歯を失った場合は「部分入れ歯(部分義歯)」、すべての歯を失った場合は「総入れ歯(総義歯)」と呼ばれます。入れ歯は食事や会話をスムーズにし、顔の形を維持する役割を持つ装置です。

令和4年の歯科疾患実態調査によると、65〜69歳では約半数、70歳以上では7割以上の高齢者が何らかの補綴物(ほてつぶつ:入れ歯やブリッジなど)を装着しています(※)。入れ歯は単に見た目だけでなく、噛む機能を回復する医療機器であり、適切に作られた入れ歯は生活の質を向上する効果が期待できます。

出典:※令和4年 歯科疾患実態調査結果の概要

入れ歯の種類

入れ歯には、失った歯の本数や状態によってさまざまな種類があります。それぞれの特徴を理解して、ご自身に合った入れ歯を選ぶことが大切です。

部分入れ歯(部分義歯)

部分入れ歯は、歯を失った部分に装着する取り外し式の入れ歯です。残っている健康な歯にバネ(クラスプと呼ばれる金属の留め具)をかけて固定する仕組みになっています。新しい部分入れ歯に慣れるまでには、少し時間がかかることもありますが、徐々に慣れて快適に使用できます。

総入れ歯(総義歯)

総入れ歯は、すべての歯を失った場合に使用する取り外し式の入れ歯です。顎全体を覆うことで、口腔内の機能を回復します。総入れ歯は、「違和感がある」「外れやすい」などのイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし、現在の総入れ歯は大変精巧なものになっており、違和感や外れやすさは以前より改善しています。

入れ歯を使用するメリット

入れ歯には失った歯の機能を回復する以外にも、メリットがあります。年齢を重ねても健康的な食生活を維持し、活発なコミュニケーションを楽しむためのサポート役となります。

食事の楽しみを取り戻せる

入れ歯を使用する1つ目のメリットは、失った歯の咀嚼(そしゃく:食べ物を噛み砕くこと)機能を回復できることです。入れ歯があれば、柔らかい食べ物だけでなく、ある程度の硬さの食品も楽しめます。これにより食事の選択肢が広がり、栄養バランスの改善にもつながります。

家族や友人との食事の時間を気兼ねなく楽しめる喜びもメリットです。最初は柔らかめの食べ物からはじめて、徐々に硬いものにチャレンジできれば、「食べられないストレス」から解放され、食事時間が再び楽しみになります。

発音や会話がスムーズになる

入れ歯を使用する2つ目のメリットは、発音や会話がスムーズになることです。歯が抜けると「サ行」「タ行」などの発音が不明瞭になりやすいですが、入れ歯を装着したあとは舌や唇が正しい位置で音を作れます。

会話の際の自信回復につながり、社交的な活動にも積極的になれます。電話での会話も聞き取りやすくなるほか、コミュニケーションが円滑になることで「話す不安」を解消でき、人との交流がより楽しくなります。

顔の形を維持して若々しい印象になる

入れ歯を使用する3つ目のメリットは、顔の形を維持して若々しい印象を保てることです。歯を失うと顔の筋肉や皮膚を支える構造が失われ、頬がこけたり、顔のしわが増えたりします。入れ歯はこうした問題をカバーし、口元や頬の形を適切に支え、顔の輪郭を維持します。

これにより、笑顔に自信が持てるようになり、精神的な若さにもつながるのが魅力です。口元の印象は見た目年齢に大きく影響するため、見た目を気にする方にとっては見逃せないポイントとなります。

残っている歯への負担を軽減できる

入れ歯を使用する4つ目のメリットは、残っている歯への負担を軽減できることです。歯が抜けた状態を放置すると、残っている歯に過剰な負担をかけかねません。入れ歯をつけると噛む力が複数の歯に分散され、結果として残存歯の寿命を延ばす効果が期待できます。

歯並びの崩れや歯の移動を防止し、新たな歯の問題も予防可能です。顎関節への負担も軽減され、顎関節症などのリスク低下にも貢献します。このように、入れ歯は「今ある歯を長く保つための予防医療」としての側面も持っているのです。

お手入れが簡単にできる

入れ歯を使用する5つ目のメリットは、お手入れが簡単にできることです。入れ歯は取り外しができるため、細部まで丁寧に清掃できる利点があります。食べカスが詰まっても外して洗浄でき、口腔内を清潔に保ちやすいです。

ブリッジやインプラントと違い、特殊な清掃道具がなくても毎食後の水洗いだけでお手入れできます。入れ歯洗浄剤を使えば、目に見えない細菌まで除去できて安心です。「清潔に保ちやすく、長く使える」という実用的なメリットを持っています。

当院の入れ歯の治療について

患者様にとって、説明なしに抜歯を行うことは大きな不安を引き起こす要因となることが考えられます。当院では、術前にレントゲンやCTを用いて詳細な診査を実施し、各患者様に最も適した抜歯方法を提案します。患者様が十分に理解された上で、治療を進めることを重視しています。

麻酔は十分に行いますので、抜歯の際に痛みを感じることはありません。まず、表面麻酔をしっかりと施した後、注射麻酔を行うことで、麻酔中の不快感をできるだけ軽減するよう努めています。また、抜歯後の痛みや腫れを最小限に抑えるため、外科的な侵襲を可能な限り減少させることを心掛けています。

当院で受けられる入れ歯治療

現在使用中の入れ歯に不具合を感じている方は、ぜひ当院にご相談ください。入れ歯の治療に関する豊富な実績を持つ当院では、保険適用の入れ歯から、自由診療の目立たない入れ歯、さらには柔らかい入れ歯まで、さまざまな選択肢をご提供しております。

ノンクラスプデンチャー

クラスプ(金属のバネ)を用いないため、外観が優れ、他者から入れ歯を使用していることがほとんど認識されないという特長があります。外観に関わる部分を除けば、一部に金属を使用して強度や噛み心地を向上させることが一般的ですが、金属アレルギーの方々には、金属を完全に排除する選択肢も存在します。

金属床義歯

金属製の部分を粘膜に接触させることで、頑丈で薄型の小型入れ歯を実現でき、違和感を軽減することが可能です。また、熱伝導率が高いため、飲食物の温度を効果的に伝えることができます。

保険適応の入れ歯

プラスチック製の義歯であり、強度が不足しており、厚みがあるために違和感を感じやすいです。また、ばねの部分が目立つ特徴があります。

治療の流れ

当院の入れ歯の治療は、以下のような流れで進めていきます。

  1. カウンセリング
  2. 口内の型取り
  3. 噛み合わせの確認
  4. 入れ歯の試着・調整
  5. 入れ歯の完成・微調整

入れ歯の作製には、通常2〜4週間程度かかりますが、患者様の状態や入れ歯の種類によって異なります。現在使用中の入れ歯がある場合は問題点を確認し、必要に応じて調整や修理を行います。

費用の目安

入れ歯の費用は、種類や材質によって異なります。以下に、一般的な費用の目安を紹介します。

入れ歯の種類料金の目安 (自己負担額)
保険適用の入れ歯
部分入れ歯 (部分床義歯)約5,000円~15,000円
総入れ歯 (全部床義歯)約20,000円~30,000円
自費診療の入れ歯
ノンクラスプデンチャー約100,000円~150,000円
シリコーン素材入り約150,000円~200,000円
金属床義歯約250,000円~300,000円

上記は一般的な目安であり、実際の費用は口腔内の状態や治療内容によって異なります。詳しくは診察時にご相談ください。状況に合わせて、適切な治療方法をご提案いたします。

保険適用について

入れ歯には、健康保険が適用・自費診療の2種類があります。選択の際は予算と求める機能・見た目のバランスを考えてお選びいただけます。

保険適用の入れ歯は費用が抑えられるメリットがありますが、素材や見た目に一定の制限があります。自費診療の入れ歯は高額になりますが、素材や設計の自由度が高く、快適性や審美性に優れるのが特徴です。

入れ歯選びは「コスパ重視か、機能・見た目重視か」の選択になります。当院では患者様のご希望に合わせて、最適な入れ歯をご提案いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

インプラントとの違いは?

インプラントは人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を固定する治療法です。一方、入れ歯は取り外し可能な装置です。入れ歯は手術不要で費用も抑えられますが、噛む力はインプラントより弱くなります。

どちらが適しているかは、口腔内の状態や予算、ライフスタイルによって異なりますので、歯科医師とよく相談して決めることをおすすめします。

差し歯との違いは?

差し歯は歯の根が残っている場合に、その上に人工の歯冠を被せる固定式の治療法です。一方、入れ歯は完全に失った歯を補うための取り外し可能な装置です。差し歯は見た目が自然で噛む力も強いですが、歯根が必要です。入れ歯は歯根がなくても使用でき、複数の歯が失われた場合に効果的です。入れ歯は取り外して清掃できるため、お手入れが比較的簡単という特徴があります。

1本だけでも入れられますか?

1本だけでも入れ歯を作ることは可能です。部分入れ歯は1本の歯を失った場合でも対応できます。1本だけの入れ歯でも、適切に設計・調整できれば、入れ歯でも快適に使用していただけます。ただし、1本だけの場合はブリッジやインプラントなどほかの治療法も検討しましょう。

入れ歯をはじめてつける平均年齢は?

入れ歯をはじめてつける平均年齢は50代後半〜60代前半が多い傾向にあります。歯周病や虫歯の進行度合いによって個人差が大きいのが特徴です。近年は予防歯科の普及により、入れ歯デビューの年齢が上がってきている傾向も見られます。一方で、事故や先天的な歯の欠損などで若い年齢から部分入れ歯を使用するケースもあります。

20代でもつけますか?

20代でも入れ歯を使用することはあります。事故や外傷、先天的な歯の欠損、重度の歯周病などが原因で若い方が入れ歯を使用するケースがあります。20代の場合は審美性を重視し、ノンクラスプデンチャーなど金属が見えない入れ歯を選びやすいです。若い方の場合は将来的にインプラント治療への移行を視野に入れた暫間的な手段として入れ歯を使用することもあります。

40代で総入れ歯の人はいますか?

40代での総入れ歯使用者は少数派ですが、確かに存在しています。重度の歯周病や虫歯、事故、特定の疾患などが若年での総入れ歯の主な原因です。若い世代向けに、より自然で違和感の少ない総入れ歯の選択肢も増えています。

保険の入れ歯でも大丈夫?

保険の入れ歯でも手入れや定期的な調整をしっかり行えば、長期間の使用も可能です。保険適用の入れ歯でも基本的な機能は十分に果たせる設計になっています。咀嚼(そしゃく)や発音、顔の形の維持など、入れ歯の基本機能はカバーできます審美性や快適性をより高めたい場合は、自費診療の入れ歯も選択肢として検討すると良いでしょう。

予備は必要ですか?

可能であれば予備の入れ歯を持っておくことをおすすめします。入れ歯が破損した場合、修理に数日かかり、その間歯がない状態で過ごすことになります。総入れ歯の場合は、食事や会話に支障をきたすため、予備があると安心です。また、旅行中の紛失や破損に備える意味でも予備は有用です。

入れ歯は保険がきくんですか?

基本的な入れ歯(レジン床義歯)は健康保険が適用される医療行為です。3割負担(高齢者は1〜2割)で治療を受けられます。修理や調整、再製作も保険適用の範囲内で対応可能です。ただし、素材や製法に制限があり、見た目や快適性に一定の限界もあります。

違和感はある?

入れ歯をはじめて装着すると、異物感や圧迫感を感じるのが一般的です。唾液の分泌量が一時的に増えたり、発音しづらさを感じたりする現象も起こります。慣れるまでの期間は個人差がありますが、通常1〜2週間程度が目安です。最初は短時間からはじめ、徐々に装着時間を延ばしていくのがおすすめです。

噛む力が弱くなる?

入れ歯の噛む力は天然歯の約40%程度になることが一般的です。硬い食べ物や粘着性のある食品は食べにくくなる可能性があります。保険適用の入れ歯は強度を保つために厚みが必要で、それが噛む力に影響します。入れ歯に慣れるにつれて噛む力も向上しますし、食べ物を小さく切るなどの工夫をすることでも対応できます。

部分入れ歯は目立つ?

保険適用の部分入れ歯は、金属のクラスプ(留め具)を使うため目立つことがあります。前歯や犬歯に金具がかかる場合、笑ったときに見えやすいという問題があります。金属アレルギーがある場合は、金属部分が口内炎の原因になることもあります。審美性を重視する場合は、ノンクラスプデンチャーなどの自費診療を検討しましょう。

定期的なメンテナンスは必要?

入れ歯は定期的なメンテナンスが必要です。入れ歯は使用していくうちに、徐々に口腔内の状態と合わなくなるからです。歯茎の形状の変化、顎の骨の吸収により、フィット感が低下する現象も起こります。一般的に半年〜1年に一度は歯科医院での調整がおすすめです。

毎食後の洗浄方法は?

食後は入れ歯を外して、流水でざっと食べカスを洗い流すのが基本です。洗う際は洗面器に水を張るか、タオルを敷くなど落下防止の工夫をしましょう。歯ブラシや入れ歯専用ブラシで優しくブラッシングして汚れを除去します。熱湯での洗浄は入れ歯の変形の原因になるため避けるべきです。

入れ歯専用ブラシって何?

入れ歯専用ブラシは毛先が硬く、頑固な汚れも落とせる特殊な歯ブラシです。柄が太く持ちやすいため、握力の弱い方でも使いやすい特徴があります。入れ歯ブラシには2種類の植毛部分があり、大きい植毛部分は広い面を、小さい植毛部分は溝や細部の清掃に適しています。

保存容器の選び方は?

入れ歯は乾燥すると変形や割れのリスクが高まるため、水中保管が基本です。専用の保存容器は透明ではなく色付きの容器を選ぶと誤って捨てる心配が減少します。容器は十分な大きさで、入れ歯全体が水に浸かるものを選択しましょう。水道水か入れ歯洗浄剤を薄めた溶液で保管するのが一般的です。

夜・就寝時は外したほうがいい?

就寝時は基本的に入れ歯を外して保管するのがおすすめです。外すことで歯茎の血行が促進され、組織の回復につながる効果があります。夜間の歯ぎしりによる入れ歯の損傷リスクも軽減できるメリットがあります。外した入れ歯は洗浄後、水または洗浄液に浸けて保管しましょう。

洗浄剤の選び方は?

部分入れ歯と総入れ歯では材質や構造が異なるため、それぞれに適した洗浄剤を選ぶことが大切です

  • 錠剤タイプ:発泡して洗浄力が高く、使いやすい一般的なタイプ
  • 粉末タイプ:細かい部分にも行き渡りやすく、価格が抑えられたタイプ
  • ジェルタイプ:即効性があり、短時間での洗浄が可能

そのほか、超音波洗浄器用は専用機器と併用することで、さらに洗浄効果を高められます。

洗浄剤を使う頻度は?

洗浄剤は基本的に毎日使用するのが理想的ですが、最低でも週に2〜3回は使用を推奨します。使用時間は製品の指示に従い、長すぎる浸け置きは避けるのが原則です。洗浄後は必ず流水でよくすすぎ、洗浄剤が残らないようにしましょう。洗浄剤の原液を直接入れ歯につけるのは避け、必ず水で薄めて使用してください。

入れ歯の寿命は?

入れ歯の寿命は種類によって異なります

  • プラスチック製(レジン床):約3~5年
  • 金属床義歯:約5年以上
  • シリコーン素材:約2~3年
  • ノンクラスプデンチャー:約3~4年程度

入れ歯は永久的なものではなく、経年劣化により徐々に機能が低下する特性があります。口腔内の状態も時間とともに変化するため、定期的な見直しが必要です。

交換が必要なサインは?

入れ歯の交換が必要なサインは、以下のとおりです

  • 痛みや腫れが繰り返し起こる
  • 虫歯や歯周病になっている
  • 隣の歯を押して歯並びが乱れている
  • 食べかすが詰まりやすく、口臭の原因になっている
  • レントゲンで嚢胞(のうほう)や異常が見つかった
  • 矯正治療を予定している

口臭が強くなった場合も、入れ歯の劣化が原因かもしれません。このサインが見られたら、早めに歯科医院を受診して調整や修理、場合によっては新しい入れ歯への交換を検討しましょう。

定期検診は必要ですか?

入れ歯をご使用の方は、問題がなくても定期的な歯科検診を受けることをおすすめします。一般的には3〜6か月に一度の検診が適切な頻度です。定期検診では入れ歯の適合状態や摩耗具合、口腔内の健康状態をチェックします。残存歯の健康状態や歯茎の変化も確認できるため、新たな問題を早期に発見できます。

入れ歯以外の治療法は?

入れ歯以外の治療法としては、インプラント治療とブリッジ治療が主な選択肢です。インプラントは人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を固定する方法で、見た目や機能が天然歯に近いという特徴があります。ブリッジは欠損した歯の両隣の健康な歯を削り、橋渡しのように人工歯を固定する方法です。歯科医師と相談しながら、自らのライフスタイルに合った方法を選ぶのがおすすめです。